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シリーズ新潟の地震(17)
活断層と大地の動き

長岡大手高校 飯川 健勝

図1 新潟県と周辺地域の水平的な動き
(仮不動点:弥彦山)(1898〜1960年)
 先回、国師ヶ岳(山梨・長野県境, 2592m)を仮不動点にしたときの水平変 動の様子を矢線で示し、その方向性から 4つの地域(東北地方南部・佐渡沖・関 東・東海)に分割しました。それは、大 局的な動向を把握する上で大切なことで すが、仮不動点のとりかたでイメージが 変わってきます。ちなみに弥彦山を仮不 動点にすると図1のように矢線が分布し ます。前の図と比べてみてください。

さらに矢線の動きを一つひとつ丁寧に 見ていくと、重要なことがわかってきま す。例えば、弥彦山・米山・鶴巣(佐渡) の3点を例にとると、三角形の面積は改 測の前後で小さくなっていることに気づ かれることでしょう。同様にして3つの 三角点を適宜組み合わせるとそれぞれの 三角形ごとに面積の膨張・収縮を計算す ることができます。その変化のレベルは、 およそ60年間で1/10万〜1/100万 程度です。

そしてこの膨張・収縮は、引き裂く力・押し潰 す力(剪断歪という)を生み出していることに なります。そしてその方向や大きさなども計算 できます。 その様子を模式 的に示すと図2 のようになりま す。左右から圧 縮する力が作用 すると上下に引っ張る(押し出す)力が作用する ことになります。また逆に、上下に引っ張る力が 働くと、左右に引き込む力が作用すると者えても よいでしょう。そのとき、対角線AC,BD上に ずれ(引き裂く力:剪断力)が生じることになり ます。この力が大きくなって割れ目が発生すると 断層と呼ばれることになります。すなわち地震の 発生です。
図2 押し引きのモデル

図3 活断層の分布と水平変動による圧縮の方向
 こうした計算を隣接する3個の三角点でつく られる三角形ごとに行い、結果を整理して圧縮 している方向や引張られている方向の連続性を 整理します。図3には、細い波線と毛羽・矢線 が書き込まれています。波線は上に述べた圧縮 方向の連続線をなめらかに整理したものです。 煩雑になるため描きこまれていませんが、引っ 張りの方向はこれらの線に直交しているものと 者えてください。

毛羽は縦ずれ活断層、矢線は横ずれ活断層をあ らわしています。そしてこれらの圧縮方向(細い 波線)が、縦ずれ断層と高角で交わり、横ずれ断 層とは低角で交差していることがわかります。 図2の圧縮方向を図3のそれにあわせると、 縦ずれ活断層は、モデルを垂直な面と考えたと きのAC・BDに相当し、逆断層タイプを表す ことになります。

富山県南部等に分布する横ずれ活断層は、そ の地域の圧縮方向にモデルのそれをあわせた地 表面と考えたときのAC・BDに相当します。 また、それらの位置はおおむね山地と平野・ 山間盆地との境界付近にあたります。新潟県で は、平野の縁辺部や信濃川流域、東北地方では 奥羽山脈の山麓等がそれに相当します。 三角点の変位を測定し、それを解析すること で、圧縮・引っ張り作用とそれに伴う歪みの大 きさを計算することができます。(つづく)

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