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    湖底に沈む「奥三面縄文遺跡群」見学記
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お知らせ

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湖底に沈む「奥三面縄文遺跡群」見学記

鷲山 厚

今頃は雪深い奥三面の山々に囲まれ、水を 注がれ深い眠りについたアチヤ平、元屋敷遺跡 を去年9月24日に飯川先生、松井直子、今井 俊夫の三氏と行って来ました。

場所は、高速で新潟、更に7号線で村上の手 前まで行き、一寸右に入る。所要時間は約2時 問。そこは旧三面中学校を利用した奥三面遺跡 調査室。この廊下から教室に展示された7〜8 千箱といわれる土器、石棒、土偶片はその質、 量共圧倒されるが、今回の目的のひとつである 縄文遺跡の発掘品は、全てこの調査室に保管さ れ、研究されているものである。

朝8時前で予約もせずに、係の久住さんから快 く解説して頂き、遺跡見学の予備知識を無い頭 に詰込み、更に車で約1時間の行程を標高1000m クラスの小雨の降りしきる朝日山地を目指し た。丁度、シドニーオリンピックで女子マラソン高 橋尚子のラジオ中継を聴きながらすれ違いも出 来ぬ様な道を車は走った。高橋世界1位の声に 目頭を擦りながら皆感激していた。
アチヤ平遺跡
アチヤ平遺跡より大朝日岳を望む2000.9.24

さて、車はパノラマが開けたような広大なアチ ヤ平遺跡に到着。三方向に谷が切れて、東側に 山形県の大朝日岳から日が出る位置。大地の 会で習った河岸段丘である。縄文前期(6千〜5 千年前)、後期の遺跡(4干〜3千5百年前)と の事。

最近でこそマスコミで豊富な報道をされるが、 私の縄文イメージは、細々と木の実や獲物を捕 り、竪穴住居で生活していという程度のものであ った。が大地の会で小林達雄教授の講演をお聞 きしてから縄文イメージを塗り替えられたばかり である。従って、係官の説明を受けても発掘物 は全て取払われ、河原の石と穴だらけの遺跡を 説明されてもイメージが涌かない惨憺たる切な い思いであった。

それが「我々の生活の原点が縄文である事」を 強調された小林教授に刺激されて、その後「県 立歴史博物館」の歴史講座に毎週通うようにな った。講座によると、なぜ縄文文化が最近注目 されはじめてきたかという理由は、次ぎの要因が あるようだ。

  1. 全国的に発掘件数が増えた事。
  2. 従来よりも枠組みを広く発掘している事。
  3. 自然科学系の学問の進歩。
  4. 発掘者の知識の増大とその技術の進歩。
  5. マスコミの扱い方が刺激的である事。

さて、氷河期終え、暖かくなった気候の縄文は 定住生活と深く係るが、住居と墓と農て場の存 在が定住条件のようです。 例にもれず、アチヤ平は44戸の住居跡、配石 墓や埋蓋(土器の再利用等で幼児墓)や土器廃 て場が在った。配石とか配石墓は個人的にも関 心事であるが、何も無いので石を立て復元した 様子を写真で見ると、その方向が特定の時期の 日の出や日没と一致するという縄文人の季節力 レンダーであるという。実際に夏至や冬至に観た かった。

又、土器の文様は大木式という東北文化圏の 物が含まれたり、我が長岡の馬高・三十稲場遺 跡に代表される信濃川文化圏の火焔型土器も あった。S字形の文様は縄をよりあわせた時でき る形である事を実験して後日理解した。 又、土器を作るのは未開民族の調査から推定 して、女性が作り、狩猟は男性の役割らしい。1 5歳の人の平均余命が15年位しか生きられな かった頃の人々の思いが墓に現われたり、アニ ミズムというか宗教はどうであったかと考えると、 (小林教授は分らぬ事は世界観と笑わせられた が)文化の伝播の凄さを想像して楽しくなる。

さて、もう一つの元屋敷遺跡(3千5百〜2千4 百年前)は縄文後期です。
係官の説明を聞けばそうかと思うが、実際勉 強不足で遺跡を見ても全く分らなかったのが正 直の処でした。アチヤ平遺跡後、約1000年間 続いたそうです。アチヤ平と違う特徴は、配石遺 構と墓が生活圏の住居と人工的な水路を挟ん で分けてある。まさに小林説の三途の川ではな いか。更に水捌けが悪く、雨でぬかるむので石を 敷き土木工事までして道路を拵えた。

又、この地から産出しない蛇紋岩で未製品の 磨製石斧がl万個以上も作られたという。後日 石斧で直径30cmの木を切倒す実験画像を見た が、その3時間に3個石斧が折れた。 経済的時間に生きている私には只々頭が下が る思いがした。

更にこの地で採れない翡翠やアスファルトが出 たという解説を聞き宗教、土木工事、交易、食生 活等の基本形態、それは現代の我々には合理 主義にドップリ漬かり忘れてしまってその意味も 価値も繋がらないが、ほんの40〜50年位前の 未だ貧しかった頃の「日本的な心の元型」まさに 「縄文の心」がその底辺に活き続いているような 気がした。それを、我々は次世代に伝えねばと 今井さんの作ってくれた豚汁とおにぎりを感謝し ていただきながら感じた一日でした。

余りにも現場を見ただけでは理解しがたかっ たが、意義ある巡検の為に次回から「大地の会」 での巡検でも、一つでも質問出来るように予習を して参加しようと思います。

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湧き水探訪

加藤 一善

私はかつてユーラシアのオアシスを子連れで 旅をしたことがある。イスタンブールから上海ま で6ヶ月、地球のしわとも言える数干メートルの 山々の高嶺は雪に覆われていた。やがて雪は 徐々に解け、伏流水となりオアシスに現出する。 清らかな湧き水はオアシス国家の煌びやかな文 化を遺した。今日私たちは、大地を掘り返して埋 もれた数珠玉のように点在するオアシスに暮らし た人々の遠い昔を想う。

まだそんな昔でない頃、どの家も井戸を使用 していた。暑い夏の日に呑んだ井戸水の冷たい 感覚、井戸水で冷やしたスイカの味はまだ心の どこかに残っている。いつの頃から井戸は何故 か不衛生のレッテルが貼られ、水道が普及して しまった。「水道水はきれいですか」と質問したら、 子供達は全員が「きれい」と答えるであろう。しか し、川の水を汲み上げ塩素で殺菌し、鉄管、塩ビ、 鉛管で送られてくる水は本当に体に良い水なの だろうか。

昨今の虚弱体質の子供、アトピー性の皮膚炎、 など少なからず水が影響しているのではないだ ろうか。もう一度あの水が呑みたい。もはや気持 ちを抑えることが出来なくなって、早速外に飛び 出して井戸水に勝るとも劣 らない湧き水を探しに出か けた。 杜々の森はあまりに有 名なので訪ねた方も多い と思う。栃尾の山深い山裾に位置し、名水百選 にも選ばれている。主な道路には杜々の森の標 識があり、迷わずいける。水場の周辺では、おば ちゃんが野菜を売っていた。石段を小さな沢へ 数段降りると、石に囲まれた大地から水がこんこ んと湧き上がっている。早速一杯飲んでみた。ラ ワルピンディからクンジュラブ峠(中国とパキスタ ンの国境)を目指したときに立ち寄った8000mも ある山麓の小さな村で飲んだ湧き水の味を思い 出した。湧き水のすぐ近くに竹が2本置いてあり 水は竹を通して流れ出ていた。「おいしかった」。 中国に入るとなぜか生水がのめなくなった。上海 の夏のあの塩素臭い水、もうお茶でごまかすし かない、

三島町の麺工房の前にある湧き水を訪ねた。 水源は工場の中にあるらしい、流し素麺の水も 同じだ。店の左側奥の土手に水源の横穴があり、 そこで水を汲んだ。セメントの壁から竹筒が出て いて子供でも汲める。竹から出た水は玉砂利の ある小さな池に落ちていた。昭和48年横浜から 船でヨーロッパを目指した、世界を見たい若者で いっぱいだった。ヨーロッパには2年もいたが、あ る日素麺が食べたいと思った。細いスパゲッティ をゆで醤油をかけてたべた。あのおいしさは今も 忘れない。

朝日酒造を横目で見ながら坂道をあがつてい くと朝日神社の石段が見えてくる、湧き水は石段 の下にある扉のついた横穴から出て石でできた 溜まり場に注いでいる。少年のころから何回ここ に来ただろう、最初は父が連れてきてくれたのだ ったろうか、コップが置いてあった。夏でも涼しい この場所は神と生き物のオアシスのようだ。今は もう大きくなった子供が言った言葉を今も思い出 す。東シナ海を渡り神戸に着いた時、「お父さん、 ここはほんとうに日本?日本って中国人がいっ ぱいいるんだね。」おいしい水を探しながら旅 の思い出が湧き水のように次々によみがってく る。

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お知らせ

●「新・新潟価値づく.りフォーラム2001」へ「大地の会」が参加しました。

展示状況 これからの地域づくりを考える「新・新潟価値づくりフォーラム2001」が3月10日(土)、新潟市の 「ユニゾンプラザ」において開催されました。「大地の会」として、不動沢の向斜軸露頭看板及び象・ シカの足跡化石のレプリカを展示するとともに、別紙により活動内容を紹介しました。

新潟県では、これまでの時代を振り返り、これからの時代を展望して子孫のために、地域資源の活 用・創造や地域の主体性、住民参加・参画の 視点のもと「ものの豊かさ」と「心の豊かさ」が 調和した「人聞らしいほんとうの豊かさ」の実 現を目指す「新・新潟価値づくり」を実施してい ます。

特に地域固有の資源・特性を活かして新 たな魅カを創造することにより各地域の新し い価値づくりにつながる取り組みを「一村一価 値づくり」として推進しています。越路町でも 「大地の会」が中心となり平成11年に「地学 学習フィールドの整備・大地を学ぶまちづくり」 として取り組みました。


●地学図書紹介

岡村喜明著『石になった足跡−へこみの正体をあばく−』

足跡化石研究の第一人者岡村喜明さんが本をまとめられました。豊富なビ ジュアルのおかげで不思議な世界へぐいぐい引き込まれてしまいます(特にワ ニの手の写真は必見!)。もちろん日本で始めてゾウの足跡化石が発見され た我が越路町についても触れられています。ご希望の方は、「大地の会」でま とめて購入いたしますのでご連絡を。代金は送料を含めて1600円です。


●平成11年度から役員でお世話になりました中静公樹さんが昨年の12月に亡くなられました。 ご冥福をお祈りするとともにお知らせします。


参加者募集   『にいがた「緑」の百年物語』県民運動スタート記念樹動

2001年の『にいがた「緑」の百年物語〜木を植える県民運動』の本格的なスタートを記念して県 内各地で記念植樹に取り組むグループが募集され、大地の会有志で下記により記念植樹を行うこ ととしました。みなさんのご参加をお待ちしています。
○植樹の場所・内容
    越路町浦の河川公園内に大地の木
    (樹種については今後の検討)を数本植える。
○植樹実施期日
    平成13年4月29日(日・祝日)
○新潟2001年宇宙への旅(新潟スタジアム・ビッグスワン)への参加
2002年ワールドカップサッカー大会の日本での開幕戦が行われる「新潟スタジアム」で新潟の 未来を謳いあげる壮大なイベント。さだまさし作曲のミュージカル「緑の百年物語」等の上演。
参加申し込み・問い合わせ越路町来迎寺永井千恵子TEL92-2407まで


役員募集

●今年度は役員改選の年です。会の運営や企画、講座 の準備、会報の作成などの一緒に仕事を手伝ってくださる方を募集して います。関心のある方は教育委員会大地の会事務局か、お近くの役員の 方までご連絡お願いします。会員の皆様、どなたでも気軽にご参加、 ご協カをお願いしたいと思います。


編集後記

歳をまた重ねたせいか、今年は特に冬が長く厳しいように感じられました。会員の皆 様はいかがでしたでしょうか。早速、春を待ちかねたその気持ちで巡検に行きましょう。またお 馴染みの顔が揃うことを楽しみにして参加をお待ちしています。毎年学習する機会が或る事はい い事だなあと思われるような会にしていけたらと思います。会報づくりの係りもそのお役に少し でもなれればと分担しお手伝いさせて頂いてい ます。会報について、皆様からの情報、ご意見 ご感想などお寄せ下さるととても助かります。 今後ともよろしくお願いします。

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