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越路町の露頭紹介

竹越 智・小林巌雄・豊岡明子

荒瀬の渋海川河床露頭

8月11日〜12日に地学団体研究会第57回新潟総会巡検コースの一つとして、 「魚沼層の堆積構造と生痕化石・軟体動物からみた古環境」が行われました。 コースは越路町からスタートし渋海川をさかのぼり松代町へとたどるものでした。
 7月6日に、「大地の会」の皆さん9人に協力していただき、荒瀬の渋海川河床 の下見を行い、露頭のそうじと柱状図作成を行いました。また、巡検当日には大地 の会の皆さん12人が参加し、おおいに盛り上がり、ともに学ぶ楽しさを味う有意義 な観察会となりました。紙面をお借りしお礼を申し上げ、荒瀬の露頭についての概略を紹介します。

地質図の意味

越路町には、渋海川の河床や林道・農道のあちこちに地層が露出しています。地層の様子 やその特徴、中に含まれている火山灰層の連続をもとに地層を区分し、地層の分布を表した のが地質図(第1図a)です。
 第1図aを見ると、越路町には先魚沼層から魚沼層上部の地層が分布していることがわかります。 魚沼層というのは約200万年前以降にこの地域がまだ海だった時代に堆積した地層の名称です。先魚沼 層は魚沼層以前の堆積物ということになります。
 魚沼層は褶曲しており(大きく波打ったように曲がっている)、ほぼ南北方向に背斜(上方に 盛り上がる)軸や向斜(下方にたわむ)軸が通っています。断面を見ると第1図bのようになります。 魚沼層にはたくさんの火山灰鍵層が含まれ、地層の対比(遠く離れた地層を比べること)に 役立っています。越路町周辺ではSK120、SK100、SK030、SK020の4枚の火山灰鍵層があります。 なお、SKというのはShibanomata Key bedの略で、小国町芝ノ又川に分布する火山灰鍵層の番号です。 魚沼層には下位から上位に向かって、SK130、120、110、100、090、080、070、060、050、040、 030、020、010まで13枚の火山灰鍵層が含まれています。したがって、SK020というのは上から 数えて2枚目の火山灰鍵層ということになります。なお、SK110は長野県、愛知県、千葉県などの 火山灰層に対比され、その堆積年代は約165万年前ということがわかっています。また、SK030は 群馬県や関東平野の地下からも見つかり、その年代は約115万年前とされています。

第1図 越路町周辺の地質図
第1図 越路町周辺の地質図(a)と地質断面 図(b)
 (越路町の足跡化石パンフレットより作成)
拡大図(268KBytes)

荒瀬で地質柱状図をつくったわけ

第1図に示したように荒瀬の河床にはSK020より上位の、つまり、魚沼層上部が露出しています。 おもに細粒の砂とシルトの互層からなります。中には漣痕や生痕化石があり、浅海から干潟性の 貝化石が産出することから上部浅海〜潮間帯(干潟)の堆積物とされています。
第2図 荒瀬の地質柱状図
第2図 荒瀬の地質柱状図
 今回、一枚一枚の地層や中に含まれている化石をよりくわしく観察し、堆積環境のくわしい 変化を調べるために、100分の1(実際の1mを図上では1cmに縮める)の地質柱状図を作りました (第2図)。一枚一枚の地層の厚さを測りながら、各地層の特徴や相互の関係、化石の有無などを 調べながら図にしたものです。第2図は7月6日下見の際につくったものに、8月11日の巡検当日、 参加者の意見・見解を取り入れ追加・修正をしました。今後、さらに新しい事実が追加され、 書き直されことになります。なお、荒瀬では地層の走向(地層がのびている方向)は北から10° 東の方向に伸び、地層の傾きは東へ60°でした。ですから、上流側が下位で(古く)、下流に行 くほど上位の(新しい)地層を見ることになります。
 第2図の1番左の目盛りは地層の厚さで単位はメートル(m)です。つぎが柱状図で記号や模様 で地層の特徴を表したものです。つぎの欄が地層の特徴を文であらわしています。さらに、含まれて いる化石、推定される古環境やその他の特徴を一番右の欄に書かれています。
 作成した分の地層の厚さは全部で約41mありました。第2図にこまかな説明をしましたが、 いくつかに区切ってまとめ、簡単に説明します。(柱状図 表)


柱状図 表
  基点からの層厚   層相・化石・推定される堆積環境
0〜4.9m シルト〜極細粒砂、化石含まず。
4.9〜18.8m シルト〜砂質シルト、生痕化石含む。
8.8〜11.7m 灰色粘土→シルトヘと変化:深い(湾口)→浅海化(内湾干潟化)。
10.1m コナラ・ハンノキの葉化石産出。
11.6〜12.7m パイプ型生痕化石多産(第3図)。
12.7〜13.7m 灰色粘土から貝化石が多産(栗田さん談)。種類はウミタケガイ、サルボウガイ、シラトリガイなどの二枚貝で潮干帯・干潟環境。
14.4〜14.8m ウェーブリップル(波の跡)(第4図)。
18.8〜23.8m シルト〜シルト・砂互層、化石含まず。
20.35〜23.8m 複合流リップル(波と流れによって形成されたしま模様)の存在から干潟環境。
27.3〜31.1m 極細粒砂〜中粒砂、生痕化石含む、複合流リップルあり。干潟。
31.1〜41.4m シルト〜砂質シルト〜極細粒砂〜細礫、炭質物〜ピート含む、生痕化石含まず。
32.4m 炭質物の盛り上がりあり。地震時の液状化跡らしい。
37.9m 藍鉄鉱産する。
41.5m〜 亜炭層4枚あり。

第3図 パイプ型生痕 第4図 ウェーブリップル
第3図 パイプ型生痕 第4図 ウェーブリップル

今回、地質柱状図をとった場所の上流側、下流側にも地層が露出していますが未調査です。 大地の会の皆さんと一緒に調べてみたいですね。荒瀬のほかにも、信越線鉄橋下、塚山農道、 金井さんに案内していただいた2カ所の露頭についても紹介したいのですが、紙面の関係で次回にさせていただきます。

写真1 しゃしん2

第5図
拡大図(233kbyte)
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