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地学団体研究会「教育シンポジウム」発表要旨

「大地から学ぶ越路町のおいたち」

−熱意と信頼でつながる地学学習の広がり−
新潟県越路町「大地の会」会長 小川幸雄

越路町教育委員会地学講座の10年

その時は越路町の夜空を焦がす天然ガス掘削井の炎があかあかと燃えて、町民の関心は「火を噴 く大地」越路原に集まっていたときでした。
 1983年、県立長岡高等学校越路分校の閉校記念事業として企画された「大地から学ぶ越路町の おいたち」と題しての地学講座には越路町の人口14,500人にありながら100人を越える参加者が 集まりました。講演をまとめた「越路の大地」末尾の「ふりかえり」では主催者の教育委員会の 担当者からは、町民の反響に驚きと興奮が伝わってきます。
当時分校に勤務されていた小林忠夫先生の呼びかけに教育委員会、新潟大学の教授陣、越路町 周辺で調査研究されている新潟第四紀グループの研究者の方々が呼応しての開催と聞きます。 講演の題材は越路の大地、身近な地学の話題を取り上げてのわかりやすい講演でした。9月〜 10月にかけての8回に亘る講座は、ほとんど欠席者もなく毎週熱心に受講していました。
図−1 解体直前の体育館で証明を増強しての講演風景
図−1 解体直前の体育館で証明を増強しての講演風景
 
 第1回の閉講に当たって、当時の長岡高校今津校長先生は、「天の時、人の和、地の利」とい うお膳立てが整ったということにつきると表現されました。
 受講者からは「講師の方々の熱心さと分かり易い資料、かみ砕いての説明にありがたい」「日頃 何気なく見ている山が今までと違った感覚で見ることができ、さらに愛着が増した」「これで終わ ることは残念、また勉強したい」との声が多く寄せられ、次年度以降に引き継がれることとなりま した。そしてこの地学講座は10年間続くことになるのです。

「大地の会」の発足

地学講座は新潟第4紀グループ、教育委員会の共催で開催されてきましたが、 いつか年中行事のようになり、受講者の交流の輪が広がり、殊に野外巡検は楽し みの一つとなっていました。10年目にあたる講座を前に、運営委員会で閉講後の ことが話題となり、「10年続いた仕組み、地学学習の灯をこのまま消してしまい たくない」という思いが受講者代表の運営委員に強く、自主運営する組織が検討 されました。そして、教育委員会、新潟第4紀グループがそれぞれの立場で応援し ていただくことが確認され、1993年12月「越路の大地に拘わる一切の学習を通して、 より我が町を理解するとともに会員相互の親睦を深めあうことを目的」とした「大地 の会」が発足することとなりました。
 事業は、講演会の開催、毎年秋に3〜4回の地学講座の開講、野外観察会の開催、 会報「おいたち」の発行などが主なものとなっています。
 現在、会員は約100名、講座の参加者は平均60名程度ですが、身近な地学の話題を 楽しみながら学んでいます。

10年を迎えた「大地の会」

図−2 野外巡検(塚野山農道の露頭)
図−2 野外巡検(塚野山農道の露頭)
 
1993年の発足1年目の活動から10年が経過しました。この間、地学や考古学に関す る講座や巡検、講演会などで、越路町には、不動沢成出の向斜軸露頭や渋海川ゾウ の足跡化石、日本一のガス田、縄文時代の遺跡など、地域資源が越路町に存在する とともに、いかにして現在があるのかというダイナミックな大地の成り立ちを学ん できました。
 またこの間、地学講座のみでなく、教育委員会・新潟第4紀グループに協力して、 不動沢成出の向斜構造露頭の調査に協力して、詳細な露頭スケッチを行い、説明看 板を立てました。この露頭は、今や大地の会のシンボル的な存在となっていますし、 対岸の観察場所の草刈りを毎年2回行い、中学・高校生の地学学習の場の整備に努 めています。
図−3 大地の会のシンボル 不動沢の向斜構造の露頭
図−3 大地の会のシンボル
不動沢の向斜構造の露頭
 
 10年目を迎えた2002年には、記念事業として今まで学んできた越路町と周辺の大 地の宝物、野外巡検で受けた驚きと感動を町民に伝える一枚のマップづくりを行い ました。
 どのようなマップをつくるかから約30名の参加者が現地調査を含む6回のワークシ ョップを重ねて、現在、その素図を完成させました。今年は実際の印刷に向けての 作業を行う予定としていますが、印刷費をどのように調達するか検討を行っている 段階です。

継続のために

大地の会は、新潟第四紀グループの先生方の地学教育に対する思いと情熱、会員の 素朴な疑問と知りたい思い。運営に当たる者など互いの信頼、教育委員会の理解 等で育ってきたと感じています。
図−4 地図づくりワークショップ
図−4 地図づくりワークショップ
 
大地の会は他の誰のためにあるものでなく、会員のためにある会。役員を含め、 みんなが義務感からではなく、「自分が楽しみながらの行動とする」。そんな 緩やかな関係が継続する力ではないかと感じています。
 10年が過ぎ、会のおいたちを見つめ直し、今後の10年にいかにつなげていくか、 学ぶことから、地学マップづくりのような地域づくりの一助となる活動のさらな る展開を検討していくことが必要と感じています。
 今年の地学講座は越路原のガス田について帝国石油(株)の技術陣を講師に開催 することとしています。 最後に発表の機会を与えて頂いたことに感謝します。
(大地の会HP) http://www10.plala.or.jp/wai2club/daitchi/index.html

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